「よってきんさい古江」転落死亡事故、本日判決公判
検察の「懲役5年」求刑 徹底弾劾
介護労働者Tさんへの「みせしめ重刑」を許さない
本年5月18 日に(有)美泉の運営するグループ ホーム「よってきんさい古江」で起こった認知症高齢者の転落死亡事故で、広島地検は、去る12 月22 日、事件当日に1 人で夜勤をしていたTさんに「保護責任者遺棄致死罪」での懲役5 年の求刑を行いました。私たち広島連帯ユニオンは、この「みせしめ」ともいえる不当な求刑を心底から弾劾します。本当に許せない!
美泉の介護現場の過酷な労働実態、とりわけ1 人夜勤による過重労働と要員不足の中で、恒常的に安全が崩壊し、事故の危険が高まっていた状況をまったく省みることなく、すべての責任を介護労働者に押しつけることは、絶対に認められません。
12 月25 日、15 時から地裁で判決公判が開かれます。私たちは、広島地裁が不当な有罪判決を下すことを許さない。そして裁判員のみなさんが、Tさんと同じ労働者として、無実・無罪の判決を出すよう求めるものです。
事故の責任は現場労働者には一切ない!
検事は論告求刑の中で、Tさんに「保護義務の怠慢」があり、そのため「被害者が死亡するという重大な結果となった」と言い切りました。さらにTさんが「自己中心的な行動を取った」と『極悪非道な介護労働者』であるように描き出しています。しかし、検事が言うように「119番通報」をするという「当たり前」の行為が、現場の判断ではできないのが美泉の介護現場です。Tさんは7 日間連続夜勤をし、些細なことで精神的にも物理的にも追い込まれるような職場環境の中で、働かざるをえなかったのです。業務のすべてを電話で報告させ、現場の労働者を「遠隔操作」でもするように従わせる(有)美泉・福川千富泉代表の下、経営方針に従わなければやっていけない労働環境が美泉の現場にはあります。特に「119 番通報する事態」や「医者を呼ぶこと」は、美泉が「医療もふくめて万全のケアをしている」という謳い文句に反することであり、徹底的に統制されていました。現に勝手に119 番したということで厳しく責められた労働者もいます。そういう美泉の過酷な労務管理の問題を抜きにして、「労働環境が過度であったとしても量刑を緩和すべきではない」とか「労使問題は関係なく過度に配慮する必要はない」と切って捨てることはできません。
この介護労働者が現場で、適切な判断ができなくなる程の過重労働や精神的圧迫(ストレス)を与え続けないと職場が回らない状況こそが事故の原因であり、Tさんにすべての責任を負わせることは絶対に認められません。こんな求刑が認められ、重罪にされ投獄されるなら、すべての介護現場の労働者は安心して働くことができなくなります。
「1 人夜勤」が事故の根本原因だ!
裁判では、検察・裁判所はいうにおよばず、弁護側も「1 人夜勤」の問題にふれませんでした。認知症老人を9 人も夜間(深夜)に1 人で世話をするのは大変な重労働です。しかし現在、美泉をはじめ多くの介護施設で、1人夜勤が行われています。1人夜勤は、今や介護施設では「当たり前」「常識」になっています。医療・福祉の現場では1 人での夜勤は絶対に安全を確保できません。しかし経費削減のために1 人夜勤がはびこっています。激しい精神的な負担や過重労働が労働者をむしばんでいきます。介護の現場の労働者の離職率が高いのは、こういう精神的な重圧に耐えられないからです。
介護現場で働く仲間は、怒りを持って働いている
Tさんは、介護の仕事を誇りにして、夜勤専門職で休みは1 ヵ月に2日か3日、8年も実家に帰れない状況で働き続けていました。勤務の要請の電話は断ることができず、自分がシフトに入らなければ他の職員にしわ寄せがいってしまう、とすべて請けて勤務してきました。こういうまじめに勤め上げてきた労働者の勤務態度をあげつらい「卑劣で」「悪質」であり、「介護福祉士という国家資格を持ち、高いモラルが求められるのにもかかわらず福祉への社会的信頼を失墜させる」とは、よくぞ言ったものです!福祉の社会的信頼を失墜させているのは、現場の労働者ではなく、(有)美泉のような「高品質の介護や医療」を売り物にして、労働者に矛盾の一切をしわ寄せして、収益を上げている介護施設経営者や資本であり、それを容認している労働行政や福祉行政です。介護労働者は「安全より金もうけ」のあり方に怒りを持っています。
すべての労働者は、労働組合で団結して闘おう!
介護で働く仲間のみなさん!Tさんの事態は決して「人ごと」ではありません。明日、自分の身の上に起こってもおかしくないことです。すべての働く仲間のみなさん!これは単に介護職場での事故の問題に限ったことでもありません。現在、外注化や非正規職化はあらゆる産業で急速に広がっています。外注化や非正規職化は、業務が細切れにされて会社の責任があいまいになり、経営者が安全に配慮せず事故が多発します。さらに経営者が、飽くなき金もうけに走ることを本質にしています。自らの生活と命を守り、生き抜くために、働く仲間は労働組合で団結して闘おう!
私たちは、検事の懲役5年の重罪求刑を絶対に許さず、Tさんと団結して闘い抜きます!働く仲間のみなさん、広島連帯ユニオンで共に闘いましょう!
2015年12月25日
広島連帯ユニオン
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